Gmail差し込み配信を時差で分ける方法|スプレッドシート活用
海外の宛先を含むリストにGmailで差し込み配信(スプレッドシートの宛先に一人ずつ送る一斉送信)をすると、予約送信の時刻は1つしか指定できないため、相手によっては深夜や早朝に届いてしまいます。解決策はツールを探すことより、スプレッドシートの準備を少し変えることです。時差の列を追加し、地域ごとに3〜4グループに分けて、グループごとに「相手の現地で午前9時頃」になる時刻を予約送信します。この記事では、Gmailとスプレッドシートだけでできる方法と、予約送信に対応した差し込み拡張機能を使うと手間が減る場面を説明します。
なぜ差し込み配信は相手の時間にずれるのか
差し込み配信は、どの方法を使っても「一度の送信操作」です。Google Workspaceの一部エディションにあるGmailの差し込み機能、Apps Script、Chrome拡張機能のいずれを使っても、予約送信の時刻は1つの日時として登録されます。そしてその時刻は、メールを送る側の端末の時刻帯で解釈されます。
そのため、混在したリストでは次のようなずれが起きます。
- 時刻は送る側の基準です。東京の午前9時は、ロンドンでは前日の午前0時、ニューヨークでは前日の午後7時です。
- 日付もずれることがあります。東京から火曜の朝にロサンゼルスの相手へ届けたいなら、東京では火曜の深夜ではなく、水曜の午前2時頃に予約する必要があります。
- 夏時間の切り替えは国ごとに時期が違います。日本は夏時間を採用していないため、海外との時差は年に数回変わります。前に計算した時刻を使い回すと、一部のグループだけ1時間ずれることがあります。
これは不具合ではなく、1回の差し込み配信では複数の時間帯を同時に最適化できないという仕組みの問題です。だからグループごとに予約時刻を分けるのが実用的な解決策になります。
手順1:スプレッドシートの各行に時差グループを付ける
差し込みに使うGoogleスプレッドシートを開き、「TZ」や「地域」といった列を追加します。都市単位の正確さは必要ありません。グループ分けができる程度で十分です。
メールアドレスしか分からない相手の地域を調べる方法は次のとおりです。
- 相手のメール署名:都市名、国番号付きの電話番号、オフィスの住所など。
- 相手の会社サイトの連絡先ページ(企業ドメインの場合)。
- 過去のメールの送信時刻。Gmailでは自分の時刻帯で表示されるので、相手にとって深夜でも自分にとっては普通の時刻に見えることがあります。送信時刻の傾向で地域を推測できる場合があります。
- LinkedInなどに載っている所在地。
正確な時差ではなく、グループ名を入力します。多くのリストは次の4グループで収まります。
| 地域グループ | 主な対象 | 現地での配信目標 |
|---|---|---|
| 国内 | 日本(JST) | 9:00 |
| 北米 | 米国・カナダ(東部と西部) | 9:00 |
| 欧州・英国 | 英国、EU、中東・アフリカ | 9:00 |
| オセアニア・アジア | オーストラリア、シンガポール、インドなど | 9:00 |
オセアニア・アジアは時差が大きいため、オーストラリアとインドの相手が多いなら2グループに分けてください。一方、人数が3人程度のグループは近い大きなグループに統合して構いません。午前7時の到着は問題ありませんが、深夜1時の到着は避けたいところです。
どの地域か判断できない行は、空欄のままにして「自分の時刻帯で送る」扱いにします。最初の配信後に分かることも多いので、最後の見直しで直せます。
手順2:各グループの現地の朝を東京の時刻に換算する
相手に届けたい現地時刻を決めます。火曜から木曜の午前中は、月曜の多忙な時間や金曜の夕方を避けられるため、よく選ばれます。ただし、相手にとって日中であることの方が重要です。
そのうえで、送信する具体的な日付について、各グループの目標時刻を東京時間に換算します。暗算や古いメモではなく、夏時間を考慮できる時計アプリや「2026年11月10日 シドニー 9時 東京時間」といった検索を使うのが確実です。
2026年11月10日(火)に東京から送る場合の例は次のとおりです(夏時間の切り替え後の時差で計算しています)。
- オーストラリア東部(シドニー)の火曜9:00 → 東京の当日(火曜)7:00に予約
- 英国(ロンドン)の火曜9:00 → 東京の当日(火曜)18:00に予約
- 米国東部(ニューヨーク)の火曜9:00 → 東京の当日(火曜)23:00に予約
- 米国西部(ロサンゼルス)の火曜9:00 → 東京の翌日(水曜)2:00に予約
ロサンゼルス向けの予約が翌日の深夜2時になるように、日付のずれは見落としやすいポイントです。換算表はスプレッドシートの別タブに書いておくと、翌月の配信でも使い回せます。また、夏時間が変わる時期(3月、10月、11月頃)には必ず再確認してください。
予約前に次の2点を確認します。
- 日付:オーストラリア向けは東京で前日夜になる場合があります。日付を1日間違えて予約しないようにしてください。
- 端末の時刻帯:Gmailの予約送信は、操作している端末の時刻帯で処理されます。出張中にノートパソコンの時刻帯が変わっていると、換算した時刻がずれます。
手順3:シートを分割して、グループごとに差し込みを予約する
Gmailは時差の列を読み取って自動で時間をずらしてはくれないため、グループごとに差し込みを作成します。シートを分割する手順は次のとおりです。
- 元のスプレッドシートで「TZ」列の見出しをクリックし、「データ」→「フィルタを作成」を選びます。
- 1つのグループだけを表示させ、表示されている行をコピーします。
- 「ファイル」→「新規作成」→「スプレッドシート」で新しいシートを作り、見出し行を含めて貼り付けます。「11月配信 国内」のように名前を付けます。
- 他のグループも同様に繰り返します。グループごとに1つのシートができます。
元のシートは残しておいてください。あとで開封時刻や返信の記録を書き込むためです。
Googleのツールだけで行う場合
- Google Workspaceのエディションに、作成画面から使えるGmailの差し込み機能が含まれている場合は、宛先にグループのシートを指定し、差し込み項目を入れて本文を書きます。送信ボタン横の矢印から「送信日時を指定」を選び、グループごとの換算時刻を設定します。個人のGmailアカウントでは使えないことが多いので、まずご自身のエディションを確認してください。
- コードを書けるなら、Google Apps Scriptでシートを読み込み、時間主導型のトリガーで
GmailApp.sendEmailを呼び出す方法があります。費用はかかりませんが、グループごとにトリガーを設定し、自分で保守する必要があります。また、個人のGmailアカウントではApps Scriptの1日あたりの送信上限が、通常の作成画面より低く設定されています。 - どちらも使えない場合は、手動で行うことになります。定型文を用意し、グループごとに数回に分けて個別に予約送信するしかありません。10人程度なら何とかなりますが、60人規模では大変です。
差し込み拡張機能を使う場合
スプレッドシートのURLから差し込み配信でき、予約送信にも対応したChrome拡張機能を使うと、上の作業を繰り返しやすくなります。作成画面を開き、グループのシートのURLを貼り付け、項目を差し込み欄に割り当て、グループごとの送信時刻を選んで予約します。
Zestmailは、Gmailの画面内から利用するChrome拡張機能です。スプレッドシートのURLを貼り付けて、列を差し込み項目に対応させ、バッチごとに送信時刻を選べます。拡張機能とWebサイトは英語のみで提供されています。無料プランは1日最大20通までで、送信メールに小さな「Sent with Zestmail」のフッターが付きます。60人に4グループで送る場合は、Proプラン(月額9ドル、または年額69ドル。7日間の無料トライアルあり)を使うか、3日程度に分けて送る方法があります。時差を基準にした配信では、数日に分けても問題ないことが多いです。料金の詳細は料金ページをご覧ください。
どの方法を使う場合も、本番の予約前に、各グループのシートでテスト送信を自分宛てに1通送ってください。名前の列が壊れていると、せっかくの午前9時の配信が台無しになります。
手順4:開封の時刻を確認し、グループを調整する
最初の複数時間帯での配信は、いわば推測です。グループ分けは署名や電話番号の国番号に基づいており、東京の住所を載せている相手が実際は別の都市にいることもあります。次回の配信を改善するには、最初の配信でいつ開封されたかを確認します。
開封を追跡している場合は、元のシートに開封時刻を書き込み、予定した時刻と比べてください。次のようなパターンに注目します。
- 同じグループの相手が、自分の時刻帯で深夜2時や3時に開封している場合は、その相手は別の地域にいる可能性があります。グループを移動してください。
- 予定より3〜4時間遅れて開封されることが続く場合は、グループの時差がずれている可能性があります。目標時刻を1時間ずらすか、グループを分けてください。
- 祝日など、本来は朝のはずの日に特定のグループが全く開封していない場合は、現地の祝日を見落としている可能性があります。次年度のメモに残しておきましょう。
Zestmailの開封追跡では、相手が開封したかどうかと時刻を確認できます。自分自身の開封や一般的なボットによる開封は除外されます。また、Gmailの受信トレイを読む権限は求めません。ただし、どの開封追跡にも限界があります。画像の読み込みをブロックする相手や、Apple Mailのプライバシー保護機能を使っている相手の開封は正しく記録されないことがあります。データは傾向を見るための目安として扱ってください。現地時間の9時15分に返信があるのに開封の記録がない場合は、返信の方が確かなシグナルです。
2〜3回配信を繰り返すと、時差の列はほぼ正確になります。その後の作業は、換算時刻を更新し(特に夏時間が切り替わる時期)、シートを分割し、4つの差し込みを予約するだけになります。
予約前の簡単なチェックリスト
- すべての行に時差グループが入っているか、意図的に空欄にしているか。
- 目標時刻は、記憶ではなく実際の送信日で換算したものか。
- オーストラリア向けなど、前日夜の予約になるグループの日付は正しいか。
- ノートパソコンの時刻帯が、想定どおりになっているか。
- 各グループの合計数が、使っているツールの1日の送信上限に収まっているか。
- 各グループのテスト送信が、自分の受信トレイで正しく表示されたか。
相手の仕事の始業時間に合わせてメールを届けたからといって、必ず返信があるわけではありません。ただ、「メールが相手の夜中に届いて、朝には埋もれていた」という、返信がない最もよくある理由は避けられます。